Z・枕草子

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魍魎の匣(コミック版)
 魍魎の匣 (1): コミック&アニメ: 志水アキ


京極夏彦原作『魍魎の匣』の漫画家志水アキによるコミカライズでございます。

京極作品は堤真一主演での映画化、CLAMPによるアニメ化ともに私の評価としては大失敗でございまして、アニメでだめなら京極作品を視覚化するのはもはや無理と結論付けていたのございます。

なにしろキャラクターのイメージが合わないのは致命的なのです。
映画版のキャスティングが合ってないのは言うまでもなく、アニメにしてもCLAMPの絵は京極作品の雰囲気とまるで違うのです。

そんな絶望感の中、この漫画化作品はやってくださいました。
見事に京極作品の世界を、人物を目に見える形で描き出してくれました。
猟奇的なシーンも真っ正面からやってくれました。

原作に対する理解、敬意があふれております。
京極堂も関口も榎木津も木場も敦子もまさにこれなのです。
鳥口君もまさにこの顔で「うへえ」と言うのです。

京極堂のウンチクまで徹底的に再現です。

原作を読んでいない人には小説版よりとっつきやすく、しかも原作に忠実。
読んだ人もさらに視覚として楽しめる。

京極ファンとして想像以上の出来、バンザイ状態でおすすめできる傑作コミカライズでございます。

全5巻、新たな京極ワールドに飛び込むもいとをかし。
10:52 | | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |
東大落城
 

文春文庫、1996年、佐々淳行著。

学生運動最大の激戦である東大安田講堂事件の全容を、当時警察の現場指揮官であった著者が臨場感と迫力のある、それでいて軽妙な筆致で記したドキュメンタリーでございます。

この著者はあさま山荘事件の現場指揮官を務めた人でもあり、昭和の「警察戦国時代」と呼ばれる激動期を最前線で生きてきた方です。

この本は、学生運動参加者がよく書くような半端なイデオロギーを振りかざすことなく、「この事件にどのように対処し、いかに鎮圧したか」を徹底的な実務の見地からレポートしており、いわば戦史と呼べるのではないかと。

同時に当時の警察内部の丁々発止のやりとりや、現場の警察官達、東大の教授達という生身の人間も生き生きと描かれていて、淡々としがちなノンフィクションものに血肉を通わせております。

「投石に使われるから道路の敷石全部はがせ。」と命令した警視総監。
学生側に監禁されながら言論で学生達をやり込め、警察の救助の連絡に「ただいま学生を教育中」と返した文学部教授。
突入時、気を抜いてた学生に「こら!まじめにやれ!」とヤジを飛ばした機動隊員。

緊迫の作戦実行の風景にこうした個性あふれる人間をからめて描いておもしろくないわけがないのです。

警察側の視点とはいえ、時代の一つの転換点を十分客観的に見られる秀作だと思います。

昭和史、いとをかし。
10:06 | | comments(2) | trackbacks(0) | - | - |
板谷バカ三代
 


2003年、ゲッツ板谷著。

パチンコ必勝ガイドに連載を持っていたフリーライターのゲッツ板谷による自分の家族をネタにしたエッセイでございます。

祖母、父、次男と板谷家三代に渡って受け継がれる限度を超えたバカの系譜。
各人が常識を上回るバカの超人であるにもかかわらず、それが1つの家族に同時に3人も存在しているという、ある種の奇跡。

彼らが個人で、または集団で巻き起こす奇跡的バカ事件の数々。

実家に起きた火事の真相、親類の結婚式粉砕、近所の家との壮絶なバカバトル等々、想像を絶する事件を語り尽くす軽妙かつ絶妙の筆致に抱腹絶倒です。

日本でこの家族レベルの爆笑事件を起こせるのは、私はチー民ぐらいしか思いつきません。笑

徹底的に自分の親兄弟をバカ呼ばわりしながらも、読んでて全く不快ではないのは、根底に家族に対する筆者の愛情が感じられるからですね。

お笑いサイトでブログや日記を書かれてる方ならすでに読まれてる方も多いのではないでしょうか。
まだ読んでない方は、その語り口はお笑いサイト的に参考にする点も多いと思いますよ。笑

あと今現在、何かに悩んでる方も読んでみればいいと思います。
読んで笑えれば、自分の悩みもしょせんその程度と思って間違いないでしょう。笑

血統書つきのバカいとをかし。
12:03 | | comments(2) | trackbacks(0) | - | - |
塗仏の宴
 


京極夏彦著、京極堂シリーズ第6作。

シリーズ初の上下巻に分かれた最大の長編でございます。
上巻は「宴の支度」、下巻は「宴の始末」と銘打たれております。

このストーリーはシリーズの中でも最も説明しにくいですね。

伊豆山中、大量殺人により消滅した村。そこに伝わるという不老不死の妖怪「くんほう様」の伝説。
各主要キャラがそれぞれ別個に関わることになる「敵」達。
新興宗教団体、気功武術集団、風水団体、女占い師、超能力少年…
これらの各事件が例によって例のごとく一つに収束していくわけですが、その裏についにシリーズ通して関わるであろう京極堂にとって最大の「真の敵」の姿が見えます。

ある意味これまでのシリーズの集大成ともいうべき話で、これまで全ての事件とそれに関わった人物達が何らかの形で事件に関係するという緻密さでございます。

が。

これだけ話のスケールを広げながら、事件の真相自体はけっこう拍子抜けするぐらい単純で、というより事件を可能にする仕掛けが単純なんですわ。

途中経過があまりに衝撃的な展開なので、期待しすぎました。
いや、むしろ前作の「絡新婦の理」が作品としてすごすぎたんですね。
どうしても前作と比較しますから。

ということで大作のわりに私はあまりお気に入りではない作品です。
京極堂のウンチクがページ数に比例して膨大なので、このシリーズの醍醐味としてのウンチクに溺れるのを一番の目的にした方がいいかも。

ただ、「最大の敵」のお披露目という観点のみで見れば、この規模の長編はいとをかしでしょう。
00:41 | | comments(2) | trackbacks(0) | - | - |
男の作法
 


1984年、池波正太郎著。

鬼平犯科帳、剣客商売などで知られる時代小説の大御所、故池波先生の随筆でございます。

「天ぷらは親の敵にでも会ったようにかぶりついて食べなきゃ」

「本当の大阪人、東京人は決して他国の食いものの悪口というのは言わない」

「男のおしゃれは自分の気持ちを引き締めるためですよ」

等々、含蓄のある言葉の数々。
衣食住に留まらず、人付き合い、金払い、夫婦など生活の全般において、男としてまさに「粋」であることの指南書ですわ。

それらも決して「こうしろ」とは強要せず、「今の時代に合わないかもしれないが、参考になれば」ぐらいの軽い気持ちで「おすすめ」してくださる語り口がまた粋。

確かに現代ではもはやニーズに合わない部分(公衆電話の作法など)もありますが、まだまだ十分通用すること多数。

「男の作法」というタイトルながら、実は「人としての作法」であり、女性にも読んでいただきたいですね。

なぜそうした方が粋なのか、歴史的・文化的な理由から効率性の問題まで趣旨明快。
薄っぺらな通ではなく、真の文化人としての姿がそこにあります。

「粋」の真髄はすなわち「他者への気遣い」だと気付かされます。

現代人だからこそ必読のいとをかし一冊。

15:17 | | comments(2) | trackbacks(0) | - | - |
周作塾
 


遠藤周作著、講談社1998年。

『海と毒薬』、『沈黙』などキリスト教における信仰と日本人の姿を真正面からテーマにした重厚な作品で知られる遠藤周作。
彼が狐狸庵先生というもう1つのペンネームで雑誌に連載していたエッセイをまとめたのがこれです。

あの遠藤周作本人が書いてるとは思えないほどユーモアに溢れた内容。

そもそも遠藤周作という名義では作風のイメージからあまりふざけたことができないというので生まれたのが狐狸庵先生なんですね。

投稿人でもイメージを変えるために偽名を使ったりすることがありますけど、それと同じですね。

『塾』という名の通り、読者に対して「〜するのをおすすめする」「〜してみたまえ」という指南スタイルなんですが、これが友達付き合いの話、株の話、痔の話、趣味など雑多に渡り、軽妙な中に人生経験の深みも感じさせます。

趣味で素人劇団や音痴の合唱団を立ち上げるなど、人生の楽しみ方の幅が広い人ですね。写真ではしかめっ面しか見たことないですが。

この本の副題が『読んでもタメにならないエッセイ』でして、この時点で狐狸庵節が全開なのですが、読んでタメになることを謳いまくってる実用書の類は実は大して役に立たないことも多いですからね。
そういうものに対する狐狸庵先生流の皮肉なのかもしれないですね。

私は実は遠藤周作よりも狐狸庵先生としての顔の方が好きなのです。

難しい作家の二面性もまたいとをかし。
16:11 | | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |
絡新婦の理
 絡新婦の理


京極夏彦著、京極堂第5作。
「じょろうぐものことわり」とお読み下さい。

京極先生の百鬼夜行シリーズでもダントツの人気を誇る「絡新婦」でございます。
宇宙犬様、みにまる様おまっとさんでした(キンキン)。

シリーズ中最大とも言うべき複雑かつ重厚な構造の事件。
場所も時間もバラバラ、関連性すらない各事件の裏で糸を引く真の敵。
真犯人自らですらコントロールできない事件の連鎖。

登場人物はもとより、読者すらタイトル通り蜘蛛の巣に絡め取られ身動きできなくなる錯覚に陥ることうけあいです。

1度では理解しきるのは困難な事件の構造、ゆえに読者は必ず2度3度と読み返すでしょう。

感心するのはこの本自体の構成です。
いきなり冒頭で真犯人との対決場面が描かれます。この時点ではもちろん誰がそうなのか分かりません。
そしてラストの文章。
これが冒頭のシーンへとつながる物語の結末。

永遠に繰り返すループなのです。
この本の構成自体がまさに蜘蛛の巣。
まるで「1度では分からないからもう1度繰り返しなさい。」と挑戦されているかのようです。

この規模の作品で最後まで緊張感を持って読めるものに出会えることはなかなかありません。

作者の狙い通りに本に絡め取られるもまたをかし。
15:54 | | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |
占星術殺人事件




1981年刊、島田荘司のデビュー作にして本格推理小説。

いまや本格ミステリー界に君臨する名探偵「御手洗潔(みたらいきよし)シリーズ」の第1弾でございます。

40年前に起きた、占星術に基づく儀式になぞらえて、体の一部ずつを切断されて殺された6人の姉妹。
いまだ未解決のこの事件に私立探偵にして占星術師の御手洗潔が挑みます。

博識にして天才的頭脳の持ち主ながら変人、そして事件記録係の少し間の抜けた相方の存在という構成はまさに日本版シャーロック・ホームズと言えるでしょう。

日記形式で書かれる事件の導入が少々長く感じる部分もありますが、それを差し引いても読み応えのある作品。

金田一少年の事件簿でも使用された、ぶっちゃけて言えばパクられたトリックの元ネタ作品としても話題になりましたので、興味のある方は読んでみてはいかがでしょう。笑

奇想的トリックがいとをかし。

15:41 | | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |
ロードス島戦記
 


水野良著作のファンタジー小説。全7巻、その他外伝等多数。

RPGに端を発し、OVA、テレビアニメなどマルチ展開し、80〜90年代に一大旋風を巻き起こしたファンタジーの代表格でございます。

封じられた邪神の影響が色濃く残る「呪われた島ロードス」を舞台に、国家間の戦争、闇の勢力との戦い、一連の戦乱の裏で仕組まれてきた陰謀と英雄達の活躍を1人の騎士の成長と共に壮大に描いていきます。

それまでのファンタジー世界においてなんでもありだった魔法やアイテムをシビアな論理や現実で縛り、常識離れした強さの英雄が出ないという点で、登場人物に人間味がありますね。

ガンダムなどの「リアルロボット」「スーパーロボット」という区別に倣うなら「リアルファンタジー」とでも呼べましょうか。

こういう世界観を徹底的に突き詰めていくと「ベルセルク」になるのかなと。

ただ、今読み返すと「文章下手だなー」と痛烈に思うのでございます。笑

小中学生向けに小説入門編としてはいとをかしではないでしょうか。笑
17:43 | | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |
鉄鼠の檻
 


京極夏彦著、京極堂シリーズ第4弾。

ある箱根の旅館の庭に突然出現した僧侶の死体をきっかけに、僧侶連続殺人事件が箱根山中の巨大寺院の中で繰り広げられます。

この京極シリーズは時も場所も一見全く関係のない事件が多視的に語られ、それが関連性をもって収束していくのが真骨頂ですが、この作品に関しては珍しく舞台が寺の中という限定された世界で話が進みます。

誰も知らない、外界から遮断され、歴史からも抹消された巨大寺院という設定がかえって物語に重厚さを与え、仏教の世界を背景に主人公も苦悩するシリーズ屈指の難事件となっております。

いつも京極堂シリーズはミステリーのジャンルではないと思うと言っておりますが、これは珍しく堂々とミステリーと言えますね。

次作が圧倒的完成度と人気を誇る中、私の最も好きな作品がこの鉄鼠の檻でございます。

横溝正史のような閉鎖的なふんいき(あえて変換しない)もいとをかし。
17:41 | | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |

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